Eishin Nose Trio “Waiting” ライナノーツ by 悠雅彦


acmusic005 FRONT

EISHIN NOSE MANHATTAN TRIO

+Eishin Nose Manhattan Trio : James Cammack(b), Duan Cook(b)

From the recording, “Waiting”

6k5 110th

https://soundcloud.com/eishin-nose/6k5-110

waiting

https://www.youtube.com/watch?v=Z0pkLVNAMjY&list=WL8_vxSR90ZT1tPltodgGiEQ&feature=mh_lolz

Jangle Jazz

https://soundcloud.com/eishin-nose/jangle-jazz

Let us proceed

https://soundcloud.com/eishin-nose/let-us-proceed

Inconspicuos space

https://www.youtube.com/watch?v=0NCNUrhS_rA

 

Manhattan Trio /野瀬栄進

 

15年余にわたってニューヨークで活動を続けるピアニスト、野瀬栄進の

待望の最新作に一筆添えることになったことを喜びたい。

 

私が初めて野瀬栄進の名を知ったのは彼のデビュー作である2001年の『 Here Now Hear 』が出てまもなく、J – Yorkers による第2作の『望郷』が発売された前後のことではなかった

かと思う。J – Yorkers を構成した井上陽介と小山太郎はその後滞米生活に終止符を打ち、帰国後は日本を代表するベーシスト及びドラマーとして大活躍を繰り広げているのはご承知の通り。だが、野瀬栄進は帰国を考えるどころか、頑としてNYでの活動に精を出す道を選択した。

 

彼は1年に少なくとも1度は帰国し全国各地をツアーすることを怠らない。私もそれが楽しみで、事情さえ許せば必ずライヴを聴きに出かけている。第3作に当たる自主制作盤『 Burning Blue 』が吹き込まれたのは2005年と翌6年のことだった。彼にとっては初のソロ・ピアノ作品で、NYで精進しつづける独立不覊の精神と、誰の肩にも寄りかからない日常の自分のありのままの思いを、ピアノに託して自由に吐露した演奏集だ。自身の演奏に際して流派や主義(イズム)に拘泥も色分けもせず、さりとて流行にとらわれない自由な筆致で綴ったソロ演奏に注目した私は、ウェブ音楽サイトの<ジャズ東京>レコード評で取りあげた。

それから今日までの約5年間、野瀬は意固地なくらい自身の生き方を変えずに地道な奮闘を続けている。

『 Burning Blue 』の後、2009年には第4作『 Inside Out Dream 』、昨2010年末には永らく米国で活動を続けるドラマーの武石聡とのライヴ・デュオ集『 The Gate 』を世に送り出した。第1作から数えて約10年間に5作品を発表したことになる。単純に考えても頼る者のないNYで孤軍奮闘している1演奏家が2年に1枚の割合でCDを世に問い続けていることじたい驚異的なことと思えるが、別の視点で見れば何にも妥協せずに自身の生き方を愚直に追い求めている野瀬は、頑固一徹この上ない音楽家といってもあながち言い過ぎではないだろう。

 

その野瀬が2009年度の<S&R Washington 賞>に輝いたというニュースは2重3重に私たちを驚かせた。前作のCDの帯に書かれた<S&R Washington Award >受賞記念アルバムという記載で、実は私も初めてこの賞のことを知った。日本の科学者2人が日本と米国の架け橋になる若い芸術家を対象に選んで顕彰する賞だという。過去にはヴァイオリンの庄司紗矢香、ピアノの小菅優、ソプラノの森麻季らが受賞したが、ジャズではむろん野瀬が初めて。この10年で5枚のCDを発表しているとはいえ、前3者のような世の脚光を浴びたわけでもない(失礼!)ジャズの演奏家が選ばれたこと、翻っていえば選考委員が米国で独力独歩の闘いを続けているジャズ・ピアニストに白羽の矢を立てたことじたいが私には新鮮な驚きであリ、同時に選考委員に敬意を表したいと心底思った。滞米1年以上などの厳しい関門をクリアしての結果だというが、1992年に単身渡米し、カリフォルニア州のフットヒル・カレッジに入って第1歩をしるして以来、19年にわたって米国での活動を持続してきた彼にとって、ある意味で報われた瞬間でもあったろう。NYという都市は生き馬の目を抜く厳しいところだが、アーティストが志を失わない限りクリエイティヴでありつづけられる都市でもあるということだ。

 

通算第6作に当たるこの作品は、彼が普段から親しく共演している仲間のジム・カマック(ベース)、及びデュアン・クック(ドラムス)と組んで初めて吹込に臨んだ、野瀬にとっても念願の1作。昨年の9月24日に、ブルックリンのスタジオ「システム2」で収録された。最後の⑨『6K5 110 』では、前作でも演奏のみならず録音技師としても腕を振るった武石聡が、野瀬自身の採録したニューヨーク街頭での雑踏のサウンドをミックスする作業に携わっている。

 

野瀬によれば、ジムとは2000年ごろから共演し合う仲で、何度かレコード共演の機会があったものの、思わしい結果が得られず、今回ようやく念願かなっての初吹込共演が実現したという。彼はピアノの巨人アーマッド・ジ

ャマルと30年余にわたって共演してきた有能なベーシスト。その彼とドラマーには誰がいいかをジムと話し合ったすえ、互いに手心を知り抜いている野瀬とジムの展開するフリーなやりとりに対応するにはステディーなドラマーが望ましいとの結論に達した、と野瀬は説明する。デュアン・クックは

ヴァネッサ・ウィリアムスやケヴィン・ユーバンクスらの吹込にも名を列ねる音楽性豊かなドラマーだ。

 

野瀬栄進は北海道・小樽の生まれ。4歳でピアノを、10歳でクラリネットをマスターしたものの、19歳のときプロのピアニストとしてスタート。92年に一念発起してカリフォルニアへ。フットヒル・カレッジ在学中にはFun Fair というジャズ・ヴォーカル・グループにジョイントして活動。95年に吹き込んだCDがDB誌の賞にも輝いたが、意を決してこの年に念願だったNYへ移住。マネス音楽カレッジとニュー・スクール(両校はこのとき合併)に入ってジャッキー・バイヤード、リッチー・バイラーク、フィル・マコーウィッツ、バリー・ハリスらについて学んだ。彼の演奏の中でこれらのピアニストたちの残像が時おり浮かんでいるようなパッセージを聴くことがあるのは決して偶然ではない。本作での演奏も例外ではないが、彼はフリーに楽想を展開するアプローチに長じており、また好んでこの演奏法を活用しようとする。フリーとはいっても、野瀬の場合は60年代の”フリー・ジャズ”の亜流ないしはその流れを汲む、形式破壊の前衛精神に鼓舞されているわけではなく、ピアニスト及び演奏表現者として、ちょうど画家がキャンバスにデッサンを書き上げていくように、自由な創造的精神で音楽世界を構築したいという純粋な心の発露の反映というべきだろう。タイトルのマンハッタン・トリオが示すように、ここでの彼はレコーディングという緊張の圧迫からあたかも解放されたかのような気分で、気の合った2人の仲間と文字通りセッションを楽しむ図がむしろほほえましく、それだけに肩肘張らない演奏となっているところがいい。それにしても、マンハッタン・トリオを構成するベースのジム・カマックとデュアン・クックの表現過多に堕さない達者なプレイ、特に野瀬の気心に寄り添うように的を得た対応を繰り広げていく技量の高さは賞賛に値する。

 

WAITING

Eishin Nose Manhattan Trio

 

acmusic005

2011/08/16

¥3,000

 

1 Let us proceed~Starting

2 Jangle Jazz

3 Vulnerable

4 Ta Ta Tsu Ta Ta

5 Waiting

6 Inconspicuous Space

7 Dropping

8 Burning Blue (bonus track)

9 6K5 110

 

Eishin Nose Manhattan Trio

 

All Compositions by Eishin Nose

Free Improvisation on 1, 2, 6, 7, 9

 

Eishin Nose Manhattan Trio

Eishin Nose(piano)

James Cammack(bass)

Dwayne Cook Broadnax(drums)

 

Produced by Eishin Nose

Recorded on September 24th, 2010

by Mike Marciano at System 2, Brooklyn.

Mixed in December 20th, 2010

by Katsuhiko Naito at Avatar Studio, New York city

 

Mixed by Satoshi Takeishi on #9(sound of New York city)

front art work(printmaking) by Arinori Ichihara

designed by CHIKU-TAG

 

 

 

野瀬と2000年から共演を続けてるJAZZ PIANOの巨匠アハマド・ジャマルのベーシスト、ジェイムス・コマックとの待望のコラボ。

野瀬とジェイムスの自由な演奏を激しいグループ感で支えるドラムのデュアン・クックとのピアノトリオアルバム。

3、5、8以外はレコーディングスタジオでその場で一つだけルールだけを決めてその場で創った曲集。

例えば、1のルールはドラムから始める、2はピアノから始める、4は一つのモチーフだけ、など。

9のボーナストラックには野瀬のNYのアパートで行ったセッションをNYの雑音を武石聡によりミックスされた。

野瀬の目指す所のグルーブ感とメロディーのあるよりフリーなJAZZの演奏を繰り広げる一枚。

宮本敬文監督『The Moment 操上和美 -写真家の欲望』の映画音楽にこのアルバムの曲が数曲使われ

エンディングロールには『Ta Ta Tsu Ta Ta』が使われた。

 

 

批評:http://www.jazztokyo.com/five/five829.html

 

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